対人援助職のための
統合的アプローチ研究会
発起人あいさつ
発起人代表 定森恭司
(心理相談室こころ)
「すべての事象は縁起的に絡み合っている」と東洋思想では説き、特に華厳哲学では、「部分に全体が包摂され、全体に部分が包摂される」と、因果論的要素還元主義的世界観と全く異なる世界観を提起します。こうした世界観は、近代科学のパラダイムを脱構築した形で登場したニュー・サイエンスや複雑系の科学でも相似的に見られます。
こうした円環的縁起的観点(※)に立てば、生きづらさを抱えた人に対する支援は、たとえ多層多次元にわたる複雑なテーマであったとしても、ある層やある次元の変容は、他の層や他の次元の変容に影響するだろうと統合的な理解が可能となります。実際、一般化可能な物理現象としての神経・生理学的な変容は、極めて高次な個別的な精神活動の変容に影響し、その逆も言えるなど、ミクロとマクロの密接な関係については、最先端の科学的研究でも実証されつつあります。自己の内的世界の変容は、文化・言語を有する環境世界としての自己自身を含む外的世界の変容に影響し、外的世界の変容は、内的世界の変容に影響しているわけです。
大切なことは、観察する者が、何を観察対象とし、どのような基準でもって何を観察しようとするかで、たとえ同じ対象を観察していても、異なる多層多次元な世界が立ち顕れてきてしまうという認識といえます。対人援助の領域において錯綜状態といえるほど、さまざまな理論や支援法・治療法が生み出されている現況も、観察主体と観察対象の組み合わせの差異化現象から紐解くことができます。ここで次のような仮説が成立します。「生きづらさを感じている人々の複雑な現象に対して、観察する者の意識を含んでできるだけ複雑な現象をあるがままに捉えていこうとする時、円環的縁起的観点に立脚した統合的支援の道が開かれるのでないか」というものです。
さらに統合的支援の道の模索のためには下記のような視点が求められます。
価値の多様化と不確実性が増す時代の中では、お互いに一致ばかりを求めるのではなく、むしろ不一致に伴うモヤモヤ感を共有し、その“ゆらぎ”の中にみんなが耐え忍ぶ時、その場から新しい発想や視点が創発されてくるのではないでしょうか。
そして、そうした流れを社会に積極的に創り出すためには、対人援助に関わる者同士がお互いのもっている情報(実践の智慧・研究成果ばかりでなく、セミナ・研修会・研究会・人材募集の関する情報等)の発信と受信ができるプラットフォームのような場が必要と考え本会を発起するものです。
※当研究会の母体となった心理相談室こころでクローズで行われていた「ホロニカル研究会」では、「部分に全体が包摂され」「全体に部分が包摂される」ような「円環的縁起的現象」を「ホロニカル」と概念化してきています。
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